【感想･おすすめ要素】メビウスストリップ

高学歴・高収入・イケメンでヒエラルキーのトップに立つ佐久間愁には高校時代、問題児グループのリーダー・早見司に執拗にいじめられていたという忌々しい過去がある。
ある日、愁は偶然司と再会し司が男好きのビッチとして底辺を生きていることを知る。
見た目も社会的地位も変わったことで、司が自分を認識していないと悟った愁は復讐を決意し、司に恋愛ごっこをしかけるのだが――。
gateauコミックス

同時収録作品

描き下ろし

カバー下：プロフィール・あとがき

概要

ジャンル	人間ドラマ
トーン	シリアス
エロ度	標準的
修正*	白抜き
キャラクター	佐久間愁（26歳／証券マン／元いじめられっ子）
キャラクター	早見司（26歳／バーテン／元いじめっ子）
場所	日本
時代	現代
重点	ストーリー
エモーション	切ない
ページ数**	188p.

* ** 電子書籍シーモア参照。修正の呼称は上図。
** 表紙含む総ページ数。

BLの館独自評価

ストーリー	★★★★☆
ラブ度・心情描写	★★★★☆
キャラクター	★★★★★
絵	★★★★★
背景	★★★★☆
インパクト	★★★★☆

感想・レビュー

復讐と性癖が絡み合う歪な恋人関係。
感情が拒んでも、互いの心を埋める二人は魂で求め合う。

学生時代、早見司にいじめられていた佐久間愁は、復讐のために早見と恋人関係になるが、願っていた展開にはならず……。

この作品の魅力を語ろうとすると肝部分のネタバレになってしまうからツライんだけど、そこを敢えて簡潔に言うと、

復讐に燃える男と、特殊な性癖を持つ男の色気が凄い。

二人のキャラクターの絵柄や心の在りようが、物語を最大限に盛り上げていると思う。端的に言うと、キャラクターの絵がイメージにぴったりなのと、心情描写の巧さなのかな。相まって色気を感じる。

早見は、特殊な性癖を満たすために佐久間を強烈に求め、佐久間から向けられる恨みを浮かべた目や、強く組み敷かれることに快感を覚えるが、実は名前すら憶えていなかった。

一方の佐久間は、感情が全部顔に出るところを見るに素地はピュアだと思わせるが、自分を取り戻すには早見に復讐し劣等感を乗り越える以外ないと思っている。自分の下で女のようによがって求める佐久間の姿を見て、最高に満たされるのだ。

こんな歪な感情の交錯する関係性が、徐々に変化していく様子が見どころ。

著者のあとがきでは、

ここはネタバレ

「今回のタイトルの由来でもある『メビウスの帯』は『無限の繰り返し』や『何らかの経験を経て過去に戻る』といった比喩表現にも用いられているそうなので　ぜひ、タイトルの意味も含めて一話から描きおろしまでの構成を楽しんで頂けると嬉しいです」

と書かれているとおり、物語は確かに繰り返したり過去に戻ったりしてはいるが、決して同じことを繰り返しているわけでも、過去と同じになっているわけでもなく、繰り返しながらも進化しているように思えた。だからこそ応援したくなる。
特に、

ここはネタバレ

バーの店長から「ずっと一緒にいる為には純粋な愛情もなくちゃ駄目だと思うのよ」というアドバイスを受けた後の早見の行動に嬉しくなって、同時にホッとした。

ああ、これで二人は幸せになれるだろうと感じることができたし、そのため読後感も良い。

あと、電子限定書き下ろしに結構大事な話出てるから読むべき！こんなに描きおろしが重要だと思ったことはないのだが！