著者 | 麻生ミツ晃 |
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出版社 | 海王社 |
レーベル | GUSH COMICS |
シリーズ | - |
発売日 | 2019/01/10 |
価格 | ¥675(税抜) |
キャラクターの感情が切ないほど伝わる、微妙な表情を描き分ける絵と緻密なストーリー。
感情をなくし幸せを諦めていたすみれと、すみれと出会い惹かれることによって大人の男へと成長する佑真。
辛い少年時代や葛藤を乗り越え、幸せな結末を掴もうとする二人に心揺さぶられます! 劇的なラストシーンに涙。
- 歳の差ロマンスが読みたい!
- 苦悩を乗り越えて幸せを掴み取る物語が読みたい!
- 卓越した構成・緻密なストーリーに心奪われたい!
概要と評価
あらすじ
親に殺されるはずだった自分は、生まれたときに一生分の幸運を使い果たしたのだ――
GUSH COMICS
ろくでもない男ばかりに引っかかるバーテンダーのすみれは、幸せを諦めて生きている。親とも疎遠で、寂しさにも慣れているはずだった。
けれど遠い親戚の大学生・佑真と再会し懐いてくる彼と過ごすうち、佑真との時間に安らぎを覚えていく。
一方、佑真はすみれへの想いを強くしていき――。
せつなく愛しい年の差ロマンス。
同時収録作品
もっと、幸せな結末 |
あとがき |
感想・レビュー
親に殺されるはずだった自分は、生まれたときに一生分の幸運を使い果たしたのだ……卓越した構成力で読者の心に迫る、切なくも温かい物語。
BLアワード2020『BEST ディープ』18位獲得作品。
この作品の凄さはなんだろう?……敢えて絞れば構成だと思う。
物語自体はシンプルだけど緻密。幼い頃の不条理な経験や感情、そうした経験の末の諦めと、作品を象徴する孤独な後ろ姿。そして、遠い親戚を頼るしかなかった少年の切なさ。こうした物語の肝になる複雑な心理が、しっかり伝わってくる。
それはほんの微妙な表情など絵から感じ取れる部分も大きいが、エピソードやシーンが過不足なく効果的に配置されている構成によるところも大きいのではないか。
もう少し具体的に書くと、親の顔色を見ていい子になるしかなかった切ない様子や、自分は親にとっていらない子だったと知るに至り自らを低く見積もる経緯、当然に与えられるべき愛も知らず、不条理な被害に遭っても誰からも守られない場面、自らの感情を吐露したり説明をする機会もなく、理解もされないばかりか親戚や友人からは蔑まされ、感情を鈍化させて人に期待することをやめるしかなかった少年期の姿。
こうした様々なエピソードやシーンが過不足なく配置されることによって、自然に人間の心の深い部分に入り込み、リアルにキャラクター達の心を感じ取ってしまうのだ。
この卓越した構成によって、感情を鈍化せた現在のキャラクターの在り方に納得し、心の動きや言動を理解し、自然に感情移入していたように思う。
主人公・すみれの前に現れる高校生・佑真。彼はすみれと似ているようで似ていない。自分側に堕としてはならないと慮るすみれだが、諦めない佑真。すみれは佑真によって、価値観を転換させられることになる。
あんなに初々しかった佑真は、すみれとの接触を経ていつの間にかしっかりした大人、男に成長していた。そして、今度は佑真がすみれの心を溶かしていく。
一方、感情をなくして生きてきたすみれは、佑真のことになると怒ったり笑ったり、感情が蘇るんだよね。
深い心の傷を癒すのには時間がかかったけど、辛い少年時代を乗り越え幸せを掴もうとする最後のシーンは、ドラマのように劇的で、自分のことのように嬉しかった。
麻生ミツ晃先生はあとがきに、
と書いており、また、ちるちるのインタビューでは、作品紹介として “裏テーマは「歪んだポジティブ」です。「感情を感じ切る」みたいな事が描けたらと思いました” と答えている。
気持ちや感情が大切に扱われたテーマのようだ。そのせいなのか、感情を止めたすみれがメインキャラクターであるはずなのに、感情が生々しいほどに迫ってくる作品で、一コマ一コマが自分のことのように愛しく、読み返すと懐かしささえ感じてしまう。そして、辛い場面もあるが、それを凌駕する温かさがある。
何度も言うけど、ほんとに凄い作品だと思う。
おすすめ要素
個人的好みと理解力の及ぶ範囲で挙げる、桃みるくのおすすめポイント!
キャラクターの感情が切ないほど伝わる、微妙な表情を描き分ける絵と緻密なストーリー。感情をなくし幸せを諦めていたすみれと、すみれと出会い惹かれることによって大人の男へと成長する佑真。
辛い少年時代や葛藤を乗り越え、幸せな結末を掴もうとする二人に心揺さぶられます! 劇的なラストシーンに涙。
- 歳の差ロマンスが読みたい!
- 苦悩を乗り越えて幸せを掴み取る物語が読みたい!
- 卓越した構成・緻密なストーリーに心奪われたい!