著者 | ビリー・バリバリー |
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出版社 | リブレ |
レーベル | ビーボーイコミックスDX |
シリーズ | - |
発売日 | 2016/12/10 |
価格 | ¥627(税抜) |
幻想とリアル、二つのレイヤーを持つようにも思える本作。ギリシャ神話を下敷きにした幻想的なレイヤーと、社会で普通に過ごし普通にやりとりをするキャラ達のリアルなレイヤーが重なりあい、独特の世界が描かれている。
物語はシリアスだけど溺愛あまあまなのも良いバランス。終始優しく、温かい物語。
- 温かく優しい物語が読みたい!
- 溺愛・あまあまなやつが読みたい!
- トラウマを乗り越えてハッピーなやつが好き!
概要と評価
あらすじ
…悪夢が怖くて眠れない。
ビーボーイコミックスDX
幼い頃の記憶とひどい悪夢にうなされ、不眠症の一紫。
しかし同僚の和深の低くて優しい声を聞いていたら不思議と眠気を誘われ…
そのまま昏倒してしまった。
自分が傍にいると一紫が深く眠れる事を知った和深は、なんと「一緒に暮らしますか!」と言いだして!?
三十路の男がお腹をポンポンされて寝かしつけられる奇妙な同居生活に一紫は申し訳なく思いつつも、和深の存在が大切なものになっていく。
同時収録作品
真夜中の社員旅行(描き下ろし) |
感想・レビュー
同僚の優しいイケボがトラウマを乗り越える鍵。
父と息子の長年の苦しみが解けていく、とても温かい物語。
始めの率直な感想として、表紙の幻想的なイメージで連想される物語とは異なる印象を持った。声・夢・睡眠という物質的でない要素が多いことは確かに幻想的とも思えるが、この物語の骨格はもう少し現実的だし、キャラクターのやりとりは日常的な描写に見える。
しかしその一方で、『真夜中のオルフェ』というタイトルに現れているようにギリシャ神話が下敷きになっていることを想像すると、この表紙が選ばれたことも頷ける。相反することを言っているようだが、不思議なレイヤーを持つ物語。
幼いころの記憶と悪夢のせいで不眠症の一紫。しかし同僚の和深の声を聴くと倒れるように眠ってしまう。和深が傍にいてくれるようになってから徐々に体力を取り戻し、悪夢の様相も変わってくる。そうしてキャラクター達の物語は動いてゆく。
トラウマとの対峙という、本来ならしんどいはずの話が、男らしく包容力のある和深がいてくれることで全く苦痛を伴わずに読める。また、一紫は自覚のない魔性の男というのも物語の彩を豊かにしている。
一紫はトラウマとの対峙に必死で和深への気持ちに気づくのが遅いし、和深も一紫のことを大切に思うためか一紫への思いに気づくのが遅れている。子供のように和深を慕う一紫も、恋愛より先に相手を思う和深も、とても魅力的なキャラクターだ。
ところで、作品をより楽しむために、タイトルになっているオルフェの物語を簡単に確認しておきたい。
オルフェは、ギリシャ神話に登場する詩人・音楽家で、竪琴 の名手。毒蛇にかまれて死んだ妻エウリュディケを連れ戻そうと冥界に下り、竪琴を弾いて冥界の人々を魅了させた。冥界の王ハデスは妻を還す代わりに「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件を出す。しかしあと少しというところで不安になり、振り向いて妻を見てしまう。望みを果たせなかったオルフェ。彼の死後、竪琴は天に昇って星座となったという。
このように、ギリシャ神話でもオルフェは妻を亡くし、連れ戻すことにも失敗している。また、オルフェの竪琴は非常に巧みで、彼が竪琴を弾くと、先述した冥界の人々だけでなく、森の動物たちや、木々や岩などの自然までもが耳を傾けたそうだ。このように、オルフェの物語でも美しい音が効果的に使われている。
「亡くした愛する妻」と「美しい音」という共通点。
ここからは勝手な妄想だけど、父と息子、そして和深の声がオルフェを演じているようにも見えるし、父と和深がオルフェで、母とよく似た妖精のような息子の一紫が妻の化身であるようにも思えた。そうして表紙を見ると、ここに至ってようやく「幻想的でぴったりではないか!」となってしまったのだ。
おすすめ要素
個人的好みと理解力の及ぶ範囲で挙げる、桃みるくのおすすめポイント!
幻想とリアル、二つのレイヤーを持つようにも思える本作。ギリシャ神話を下敷きにした幻想的なレイヤーと、社会で普通に過ごし普通にやりとりをするキャラ達のリアルなレイヤーが重なりあい、独特の世界が描かれている。
物語はシリアスだけど溺愛あまあまなのも良いバランス。終始優しく、温かい物語。
- 温かく優しい物語が読みたい!
- 溺愛・あまあまなやつが読みたい!
- トラウマを乗り越えてハッピーなやつが好き!