著者 | 西田ヒガシ |
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出版社 | 茜新社 |
レーベル | EDGE COMIX |
発売日 | 2019/12/26 |
価格 | ¥690(税抜) |
この作品の魅力は、シリアスとファンタジーの絶妙なバランスと、作者とキャラクターから伝わってくる熱!
そして、作品に散りばめられたヒントを発見したり、様々な解釈を楽しんだりできる面白さ。
西田ヒガシ先生ならではの空気感で、大人の恋を楽しめる作品です!
- 繰り返し読んで、新たな発見を愉しみたい!
- 切なくて考えさせられる、大人の恋が見たい!
- 一筋縄ではいかない男の物語を読みたい!
概要と評価
あらすじ
元教師の前田要はオンラインレッスンで日本語を教えていた生徒に会うため、単身で内戦が激化する国へ向かった。そこで戦火の混乱に巻き込まれた前田は反政府ゲリラのリーダー、ジョンと呼ばれる男を助け行動を共にすることに。率先して前線に身を置くジョンはなぜか見るたびに老け、若返りを繰り返しているように見えて…?生と死が隣り合わせの戦場で紡がれる、西田ヒガシ究極のラブストーリー。
EDGE COMIX
感想・レビュー
何度も読み返したい!
噛めば噛むほど味が出る、時空を超えた大人のラブストーリー。
こ、これは最後の最後まで気が抜けない!
終盤に差し掛かり、なんとなく物語の完結を予想したところで見事に裏切られた。物語はシリアスだけどファンタジー。登場するキャラクターにも多面性があり、何とも不思議なバランスの作品である。
読後には「ああ、これぞまさにロマンティックだ…」としみじみ感じ入ってしまう全体を通した説得力。
西田ヒガシ先生自ら「後悔はない」と語る、渾身のラブストーリーの登場だ。
ロマンチック【romantic】
デジタル大辞泉(小学館)
[形動]現実を離れ、情緒的で甘美なさま。また、そのような事柄を好むさま。空想的。「ロマンチックな夢にひたる」
それにしても、いかにも難しそうな紛争地の物語を描くとは。読者としては、これをテーマに取り上げた背景が気になるところだが、西田ヒガシ先生が作品に係わる話に触れておられるので、いくつかご紹介したい。
まず先述で少し触れた通り、西田ヒガシ先生は『ロマンティック』について「この時点でこういうの以外一切描けなかったと思うので後悔はない」と述べておられる。
紛争地という、常に死や別れを意識させられる厳しい世界。そこで繰り広げられる、時間も次元も超えた愛の物語。
読者のレビューを読むと「難しい」と語る声も少なくない。確かにそうかもしれない。解釈の仕方も一通りではないだろう。だからこそ、何度も繰り返し読んで味わいを深めることができる “一冊で何度も美味しい” 作品とも言える。
また、西田ヒガシ先生の「次コミックス出るのはいつになるかわからないしこれが最後かもしれません」という発言は、ファンにとってはとても重い言葉だ。これに続く呟きを見ると就職活動もされていたそうで、あまりに本気度が高すぎる…。
こんなとき、読者にとって淋しいのはもちろん、才能がもったいないなどと思ってしまうが、実際の事情は分からないし常に作者の意向を大切にしたいという気持ちが重なって、ひたすら応援する以外に打つ手がないというのが切ないところ。
さらに、『ロマンティック』の書籍紹介の際には以下のように発言された。
西田ヒガシ先生の言葉のまま、これは、ままならない人生を頑張って生きてきた人間同士のロマンティックな話なのだ。頑張っている人達だからこそ、見る者の心を動かすのかもしれない。
戦地で闘う男ほどではないにせよ、ある程度歳を重ねれば人生のままならなさを知っている。頑張れば必ず報われるなんて、そんな甘いものではないことも知っている。「ままならない人生だったけど、最後に優しさや愛を感じられたら、人生も悪くないよね…」と救われる思いがした。
興味深い話をもうひとつ。
先生はTwitterで『ロマンティック』の創作時にあれこれ練り込んでも完成してみると全然違うものになっていたという話をされていた。作家によってはキャラが勝手に動き出すという人もいて、創作物が生み出される過程というのは、それが出来ない人間にとってはとても不思議なものだ。
それと同時に、一つの作品を作り出すのにどれだけのエネルギーと蓄積が必要なのかということの、一端を垣間見たような気もした。
おすすめ要素
個人的好みと理解力の及ぶ範囲で挙げる、桃みるくのおすすめポイント!
この作品の魅力は、シリアスとファンタジーの絶妙なバランスと、作者とキャラクターから伝わってくる熱!
そして、作品に散りばめられたヒントを発見したり、様々な解釈を楽しんだりできる面白さ。
西田ヒガシ先生ならではの空気感で、大人の恋を楽しめる作品です!
- 繰り返し読んで、新たな発見を愉しみたい!
- 切なくて考えさせられる、大人の恋が見たい!
- 一筋縄ではいかない男の物語を読みたい!