【感想･おすすめ要素】憧れた人は42歳の娼夫でした

「いくらでも抱かれてあげますよ、料金分なら」医師でも上司でも、貴方のお父様でも…

理想の姿になってお客様を癒す、ミドルガイたちによる楽園「ミドル・ムスタング」。
そこの人気娼夫として働く、ダンディ（源氏名）42歳。

ある日、新規のお客様からの指名を受けて待ち合わせ場所へ向かうと、そこにはダンディの過去を知る人物・伊部（いべ）の姿があって…

同時収録作品

書き下ろし

概要

ジャンル	人間ドラマ
トーン	シリアス
エロ度	標準
修正*	白抜き
場所	日本
時代	現代
重点	ストーリー
エモーション	切ない
ページ数**	182p.

* ** 電子書籍シーモア参照。修正の呼称は上図。
** 表紙含む総ページ数。

BLの館独自評価

ストーリー	4.5
ラブラブ度	4.0
心情描写	5.0
キャラクター	5.0
絵	5.0
背景	5.0
インパクト	4.5

カップリングと登場人物

攻

伊部（記者）

黒髪攻め｜執着攻め｜ワンコ攻め｜年下攻め

奥田が記者だった十年近く前、後輩として教育を受ける。奥田のことを慕っていたが、彼の秘密を知り拒絶してしまう。

受

奥田（42歳／娼夫）

40代以上受け｜メガネ｜スーツ｜男娼｜誘い受け｜ほだされ受け

お客様を理想の姿で癒す『ミドル・ムスタング』の人気男娼。42歳。源氏名はダンディ。伊部のかつての先輩記者で、教育を担当していた。

脇役・当て馬

郁郎君

任侠桐ケ谷組若頭。「親代わりの男を愛しているだなんて許されない」と言って、二年前から本命の代わりに奥田を買っている。

横井

既婚者だが、部下の奥田と関係を持っていた。

ストーリー紹介

今宵は、どんなセックスをお望みですか？

理想の姿になってお客様を癒すミドルガイたちによる楽園「ミドル・ムスタング」の人気娼夫・ダンディ。42歳。

ある日、新規のお客様からの指名を受けて待ち合わせ場所へ向かうと、ダンディの過去を知る人物・伊部が姿を現した。

ダンディをずっと探していたと言う伊部。過去を掘り返されるのは迷惑だが、仕事としてならと “娼夫と客” としての一夜を過ごす。

伊部の目的は何なのか。伊部との再会は、ダンディにどのような影響を与えることになるのか。

感想・レビュー

元後輩の年下記者 × 訳アリおじさん娼夫。
精神的負債を抱えたイケオジ男娼が、高級スーツと心の鎧を脱ぐ時。

構成が卓越していて、絵も言葉も美しい。三拍子揃った作品はそれほど多くはないと思うが、本作はその中に入る。

言葉の美しさは、深く長く心に残る働きをする。それでなくても背景まで美しい絵だけど、それを何倍にも引き立たせ、物語をぐっと印象深いものにし、作品全体を上質にしてくれる。この作品の読後、心にしみじみと残ったものは言葉の力によるところが大きかった。

作中にはいくつも美しいと感じた言葉があったけど、特に印象に残ったもののひとつがこれだ。

ここはネタバレ

温厚そうに微笑む笑顔の下に
真面目に隙なく着こまれたスーツの下に
隠され持て余された欲が溢れるのが
「綺麗で目が離せなかった」
同時に苛立った
どうしてその目線の先が
俺ではないんだと

こうした言葉によって総合力が引き上げられた、素晴らしい作品だと思う。

冒頭に収録されている『夢の泡』は、『憧れた人は42歳の娼夫でした』のプロローグとも言える内容で、『熟れおじBL』に掲載されていた作品。『憧れた人は42歳の娼夫でした』の内容に深く関わっており、ストーリー展開の重要な要になっている。

登場する人物たちは、人生の酸いも甘いも噛み分ける。しかしその実、ウブで理想を捨てきれず、愛する人との恋愛経験は浅い。そんな男たちの、甘く、切なく、幸せな物語。

夜な夜な着飾る高級な衣装は、彼を守る防具。
防具を付け客の要望のままに演じ、プライベートでさえ本音を閉じ込め演じることにより自分を保って生きてきたイケオジが、防具を捨て裸になった姿にはグッときた。

おじ様、どうぞこれからは沢山甘やかされて下さい！